ランナーの中には膝の痛みに悩まされている方も多いと思います。症状によってはトレーニングの時だけではなく、日常生活においても痛みを伴うこともあります。
今回は、膝の痛みの中でも「鵞足炎(がそくえん)」について解説していきます。
鵞足炎とは
鵞足炎とは、ランニングを始めとした運動全般や、日常生活での使いすぎなどにより(以下オーバーユース)膝関節に炎症が起こるスポーツ障害の一つです。
鵞足とは、縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はっきん)・半腱様筋(はんけんようきん)の3つの腱が、脛骨(けいこつ)というすねの骨に付着します。この形がガチョウの足に似ていることから鵞足と言われ、この部位で起こる炎症を鵞足炎と言います。
鵞足炎の症状と痛みの特徴
鵞足炎の症状には次のようなものがあります。
⚪︎膝の内側からすねの上の辺りに痛みがある
⚪︎すねの内側に運動後に痛みが出る。重症例では安静時でも痛みがでてくる
⚪︎日常生活では階段の昇り降りで痛みがでる
⚪︎運動量が増えたあたりから症状が出現する
⚪︎しばしば膝関節の内側半月板損傷と勘違いすることがある
鵞足炎が発生する原因
鵞足炎は繰り返す膝関節の曲げ伸ばしによるオーバーユースで発生する事が多いですが、膝関節だけの問題だけではなく、その他にも原因があります。
①ランニングで脚を後ろに蹴り出す際や、足を地面に着く際に膝が内側へ向き、つま先が膝の外に向く動作「knee in-toe out(ニーイン・トゥーアウト)」によるもの
②コンディショニング不良やオーバーワーク(ウォーミングアップ不足/クールダウン不足)
③急に長距離を走った時や、新しく運動を始めた時など運動量が増えた時
④アライメント不良(X脚・扁平足など)
⑤正しくないランニングフォーム
⑥足に合わないシューズや練習場所
鵞足炎の治療や対処法
鵞足炎の治療としては保存療法が中心になります。患部の安静だけではなく、症状の原因や誘因を検討し、股関節周りや、膝の曲げ伸ばしに関係する筋肉のストレッチやトレーニングを継続します。
病院では内服薬や湿布、場合によって対外衝撃波疼痛治療術などを使用して治療を行います。またインソールの装着やリハビリ(筋力トレーニング・ストレッチ)なども有効です。特にリハビリではランニングフォームのチェックや補強トレーニングなど、普段見落としがちな所など、症状が落ち着いた後の予防にも有用です。
鵞足炎は発生のメカニズムから一度発症すると長期化するケースがあり、予防が大切になります。
まとめ
今回は、膝の内側の痛みである鵞足炎をご紹介しました。
名前だけ聞くとあまり馴染みの少ない疾患だと思いますが、ランナーを始めとした運動習慣がある方であれば誰にでも起こる可能性があります。
運動前後のウォーミングアップ・ストレッチや、練習強度・内容・足あったシューズの検討、ランニングフォームのチェックなどをおこない、予防することが大事です。
膝の内側に痛みを感じた時は休息を取ったり、練習内容・ランニングフォームの見直しなど工夫をしながら、充実したランニングライフをおくりましょう。
何かありましたら、ご遠慮なく御相談下さい。
〈参考文献〉
松田病院 スポーツ整形外科・関節鏡センター 膝・下肢
ナショナルチームドクター・トレーナーが書いた種目別スポーツ障害の診療